2日前に初めてのTSUTAYAディスカスで届いた2枚目のCDが今作。TSUTAYAディスカスで借りた作品は基本的に返却する前に何かしらのレビューを残してから返却したいのだが、いかんせん聴きたい音楽の気分がコロコロ変わるので、先日ルミナスオレンジの記事を書いてから、またポストロック/オルタナな気分が戻ってくるのを待っていました。
先日もルミナスオレンジで書いたし書けることがあるだろうか、とも思うのだがやってみたいと思う。同じアーティストの作品をレビューしていくのはきっと何か得られるものがあるだろう。
/1.Information
Label: | Zankyo Record – ZNR-077 |
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Format: | CD, Compilation |
Country: | Japan |
Released: | |
Genre: | Rock |
Style: | Shoegaze, Indie Rock |
1 | Flowline | 4:49 | |
2 | Utatane No Hibi(L’Ecume Des Jours) | 4:54 | |
3 | Walkblind(2009年再録音) | 4:04 | |
4 | Ken-Ban | 5:38 | |
5 | Every Single Child | 4:31 | |
6 | Tears Of Honey | 4:24 | |
7 | Gertrude | 3:56 | |
8 | Honey Eyes(2009年再録音) | 7:14 | |
9 | Sheet Music | 4:03 | |
10 | Drop You Vivid Colours | 4:39 | |
11 | Silver Clothes | 5:06 | |
12 | Starred Leaf | 6:05 | |
13 | Sakura Swirl | 4:36 | |
14 | Chapter22 | 3:50 | |
15 | Fresh Berry Soup | 3:50 |
https://www.discogs.com/release/2302191-Luminous-Orange-Best-Of-Luminous-Orange
以下ユニオンの商品詳細から抜粋
国内外の信頼すべきレーベルから良質な作品をリリースし続けているLuminous Orange。今回は残響レコードとタッグを組み、初のベスト盤の発売が決定!近年入手困難であったマキシシングル「LUMINOUSORANGESUGARPLASTIC」、1998年に英国で発売された超レア限定7インチ「Puppy Dog Mail EP」、最新作「Sakura Swirl」まで、全作品から竹内里恵(Vo/Guitar)が厳選した15曲を収録。
また「Walkblind」と「Honey Eyes」は現在のサポートメンバーである、河野岳人(Bass/マヒルノ他)、西浦謙助(Drums/相対性理論、進行方向別通行区分、他)、柳川勝哉(Guitar/Caucus)と共に新規録音。マスタリングは日本を代表するマスタリングエンジニアの一人であるOrangeの小泉由香が担当。
ヴィヴィッドなメロディーと複雑な曲展開が両立しているLuminous Orangeのスタイルを、いとも軽やかに演奏してきた歴代のサポートメンバー(アヒトイナザワ、中尾憲太郎、藤井真生(Ca-p)、江崎典利(toddle)、舘山裕之(swarm’s arm)、 渡辺成徳(mash)等)の個性にも要注目です。
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/IND3973
/2.Review
ベスト盤ということで、時系列で作品を追っていたら、このコンピレーションの審美眼のようなものを推察して語ることもできるのだろう。しかし自分は時系列で聞いているわけでもないので、ルミナスオレンジ初心者の入門盤として聴いてみようかなぁと思う。
2.Utatane No Hibi(L’Ecume Des Jours)
2曲目のAメロのコード進行超カッコよくてオシャレやなぁ。僕は基本的に変わったコード進行してる曲が好きなんですが、ここで鳴っているタイプの音はネオアコ系の音選びという感じですね。今再評価が進んでるLampとかはジャズ派生のボサノヴァ系統の音選びだと思うんですけど、それとは全く違う引き出しから出てくるコードですよね。”ネオアコ”っぽい音の判断基準みたいなものがどこから生まれて来ているのかは気になるところ。ここはもう少し知識が欲しい。(ちなみに台風クラブもバリバリロックなサウンドメイクや佇まいだけど、使用コードはネオアコに近いんちゃうか?と思ってた時期あった。今実際聴いてみるとコード進行は確かに激しいけど、ネオアコの音選びではないかも?どうなんだろう)
またサビ終わり〜Aメロに戻るまでに差し込まれるギター装飾のピロピロ感が2010年代のポストロックの源流を感じさせるようなサウンドで、個人的にはどこか懐かしかったりした。
※12/1追記:コード進行ウネウネ系の好みを分類すると、ボサノヴァ(ジャズ)系統、ネオアコ系統、ロック系統(台風クラブなど)、ポップス系統(田中秀和、新井昭乃)、音ゲー系統があるなと、ふと思ったのでメモ書き。プログレもコード進行激しいから好きになれるかもしれないのだけど、まだハマれていない。クラウトロックとかちゃんといつか聴いてみよう、CANとか結構好きな感じだった気がするし。
↓新井昭乃「覚醒都市」、サビあたりのコード進行が凄まじい神曲です。
↓音ゲー系統の神曲
↓BMS音楽家のparaokaさんの神曲、Beatmania系の作家のコード進行のスピード感が好き。
↓sasakure.UKさんも初期の楽曲はBMS作家の感じが色濃く出てて好きでした。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm1808295
https://www.nicovideo.jp/watch/sm528317
https://w.atwiki.jp/laser_bm/pages/50.html
BMSは今後のディグの一大テーマになりそう。あと、BMSと当時クラブシーンで流行っていたD&B、ジャングル系の音楽にも接続していくからきっとちゃんとディグレば得られるものが多いはず。
※追記終了、脱線すみません。
4.Ken-Ban
TrattoriaからリリースされたマキシシングルLuminousorangesugarplastic(2000)の収録曲のようです。ダウナーだけどちゃんとポストロックしてる感じがするね。
あとイントロのギターのフレージングを聴いてBoredomsの↓を思い出した。2つの音をタッピングか何かで繰り返し鳴らすんだけど、Boredomsみたいなスピリチュアルで土着的なバンドがアコースティックな楽器でやるのもカッコ良いし、ルミナスオレンジみたいにポストロックのサウンドメイクでやるのも良いね。どこか幻想的で瞑想的、ミステリアスな風合いになる。Boredomsno”Vision Creation Newsun”が1999年リリースだから、だいたいそれくらいの年代に流行っていたテクニックなのかもしれんね。
こうやって借りたCDを1曲1曲アルバム通して聴いて、自分の琴線に刺さる音をじっくり探っていく感じはやっぱり楽しいな。好みじゃなくても聞いてると自分の「好き」な音がどんどん拡張されていくのよね。やはり音楽の鑑賞体験ってサブスクで全てを代用できるほど単純では無さそう。
7.Gertrude
この曲は触れないといけない。1996年リリースの1stAL”Vivid Short Trip”に収録のこの曲。ルミナスオレンジのサウンドのイメージって”動く”シューゲイザーって感じだけど、この曲に関しては、”音の壁”って感じのシューゲイザーシューゲイザーしてる音が鳴っている。あと、ボーカルの少し遠いところから鳴っている感じのミキシングが北欧ぽいな〜と思ってると、リコーダー(?)の笛の音が聴こえて来て、やっぱりこれは意図的にケルトっぽい音楽からの影響を汲んでいるだなぁと思った。
ルミナスオレンジの音楽を今まで聞いて来て、ケルトっぽいと思うことは無かったのでこの発見は嬉しい。コード進行や楽器の醸すサウンドといった表立った部分に隠れて、微妙な音の佇まいというか、遠近感というか、そういった部分にもアーティストの個性って出るのだな、面白い。
↓前回触れたクラナドもアイルランドのバンド。
↓アメリカのバンドだけどIvy、ボーカルの微妙な清涼感は近いかな〜とパッと思い浮かんだ。
12/1(金)の朝になりました、8曲目からまた聴いていきます。
8.Honey Eyes
こういうダウナーなコードの下降進行大好物です、すげえ良い。Youtube版は’98年リリース3AL収録のやつで、このベストコンピ盤の奴は2008年に再録されたようで、フロアタムのどこどこ感やギターの歪み方が控えめになってクリーンな仕上がりになってる。特にアウトロあたりの音像は再録版の方がかなり音の壁を意識されたシューゲイザーライクなサウンドメイクに変更されているみたい。
ダウナーなギターで好きなのは、RCサクセションの仲井戸麗市さんがギターを引いているらしい(違うかも)、Serial Experiments LainのOST収録の”霧の異次元”という曲。LainはTiktokの影響も合ってサブカルのイコンのように今はなってしまっているけれど、やっぱり作品全体を覆うダークな世界観も相まって大好きな作品です。
BleachのOST収録の”nothing can be explained”も大好き。この曲が入っている1st Seasonのサントラは最近Light in the AticがLPを2023年に発売していてビビった。好きな作品なので嬉しいけれど。
どんどん話が脱線していって、読んでいる方には申し訳ないけれどもう1作品だけ。(自分の好きな音楽を結びつけていく作業もこのブログの一つの目的でもあるので…)こういうダークなギターサウンドの好みが形成されたのは、中学1年生の時にRAD WIMPSと間違えてRadioheadのCDを借りて”Weird Fishes”を聴いたからだと思う。
“Weird Fishes”の3音で繰り返すギターアルペジオの影響で、自分で作った曲にも使っているので、相当根深いところで好きな音楽技法、サウンドなんだと思う。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm33854399
3拍子で3音合わせるのも良いし、4拍子の曲に組み込んでも、すごくシンプルだがポリリズム感が出て良い。サウンドの好みと同時に、リズムの部分にも惹かれているのかもしれない。この辺りはアフリカ系の音源とかを探っていくと、より自分の感性が拡張されていくかもしれない。
脱線しすぎで全然ルミナスオレンジを聴き終わらないな…。いつかわかりやすく自分の好みの音楽をタグづけてマッピング出来たら良いな。
9.Sheet Music
こういうアルバムに1、2曲入ってるような、B面ぽい穏やかな曲良いですよね。好きです。竹内さんのコードの趣味がきちっと出ていて、ルミナスオレンジの曲って感じする。
13.Sakura Swirl
この曲はネオアコベースだけど、ボサノヴァっぽくコードが解決していくところも見えてすごく良いな。CDに収録されてる音源だとドラムが打ち込みになっていて、90年代のカヒミ・カリィやMomusを始めとしたフレンチ・ポップ趣味というか、ベルギーのインディー・レーベルの「クレプスキュール」系統の音とのつながりを感じる。
15.Fresh Berry Soup
15曲目の曲もまさにフレンチポップとか、ボサノヴァの影響がある感じですね。ネオアコ系とボサノヴァ系を別系統でくくっていたけど、歴史を紐解いていくと繋がってるのかもしれない。
クレプスキュールは、俺の人生のベスト盤にもあげているthe french impressionistの音源や、フレンチポップの代表格Mikadoなどの作品がリリースされているが、業界の人が持つイメージとしては”ネオアコの優良レーベル”という感じらしい。
クレプスキュールについては下記のブログが概要がわかりやすく面白かったです。
https://www.mameshibarecords.com/blog/2018/10/02/044040
クレプスキュールが”ネオアコ”と称される由縁を調べてみたら、Pale Fountains(UKリヴァプール)が’82年に1stシングルをこのレーベルから出してるみたい。名前を何となく知っていただけだったけれど、聴いてみたら「これがネオアコや!」と思えるサウンドでめっちゃ良かった。こういうラッパが鳴ってる系のフレンチ・アコースティックポップのレコードちょこちょこ持っていて好きです。ちゃんと音源借りて聴いてみたいな。ネオアコとかフレンチポップって”ニューウェイブ”という言葉とも隣接しているようで、その辺りも今後つながりを肌で感じられるようになるといいなと思う。
↓コーネリアスのラブパレードとかもそうだよね。
↓ココナッツディスク池袋店に通ってたときに手に入れた、デイヴ・フリッシュバーグのオクラホマ・トードもサウンドの風合いとかは近い気がする。
アンテナ(ソロ名義はIsabelle Antena)っていうアーティストがクレプスキュールのレーベルの顔らしいのだけど、初めて今聴いてみたら、超超超良くってこれはCD借りたり現物買いたいなって思う音だった。ボサノヴァがベースにおしゃれなポップにまとまっている感じで、最高だ。
“Camino del sol”(’82年)、さいっこうだな。ツタヤディスカスには残念ながらなかったから探してるんだけど、どうやらいろんなヴァージョンがあるみたいで、せっかくなら2枚組でライブ音源なども広くカヴァーしている下記のバージョンのCDが良いのだが全然見つかんねえや。
https://diskunion.net/indiealt/ct/detail/AWY131031-AT1
↓在庫あるのが新装ジャケしかなくってでも、LPで聴きたいし曲も多いからこっちを結局注文しました、経験上、めちゃめちゃビビッと来た音楽は絶対に買っておくべき。
https://diskunion.net/indiealt/ct/detail/04IA22893
こうやって違う作品を精聴して、ディグが進んでいく感覚めっちゃ楽しい。けれど、せっかく内省的に(Mさん的に言えば、文章を紡ぎながら制作的な態度で)音楽と触れ合っている時間が、消費的な態度(お金を使う喜びとか)にすげ変わっていかないように注意したい。音楽とは”消費”的にではなく”愛好”的に自分と結びついていてほしい。音楽関連で注意したい消費的な態度っていうのは、1.金を使うことの喜びの他に、2.DJに”使える”みたいな視点でディグ進めるのも消費だと思う。イントロの入り方が繋ぎやすいとか、これ流したら玄人ぽいなとか、そういう雑な感覚には陥らないようにしたい。
TSUTAYAディスカスにIsabella Antenna名義の作品はちょこちょこあるようなので、早速次のレンタル希望リストに入れた。ニューウェイブ、フレンチポップ、ジャズ、ネオアコ、AORと、無限に音楽が繋がっていくのは楽しいな。最高。
今回はこの辺で。2023/12/1 13:56 終了。